ザインエレクトロニクスのキャッシュフロー分析

今回のキャッシュフロー分析はザインエレクトロニクスです。この企業は、日本で初めて成功した半導体ベンチャーと言われております。

ザインの半導体ビジネスの特徴の1つは工場を持たず、製造は台湾の企業に完全に委託していることです。自社では回路設計に特化しており、こうすることで工場経営による重い固定費負担を回避し、資本の弱いベンチャーでもビジネスとして成立させることに成功しました。いわゆるファブレスメーカーというものですね。今では半導体を手がける多くの会社がファブレスになっているのですが、この会社が創業した当時はとても珍しいものでした。

では初めに2000年12月期から現在にかけてのキャッシュフロー計算書をまとめたものを下表に示します。

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累積のCFを見ると営業CFが+104億円に対し投資CFが-32億円で、差し引き72億円となっています。2014年の年間売り上げ高が37億円程度なので、かなり現金を生み出す能力は高いです。

しかし、年ごとの営業CFは-4億円から24億円まで非常に大きくばらついています。この会社の収益は、めちゃくちゃ不安定だということですね。投資CFも-21億円から16億円とこちらもぱらついています。投資CFは有価証券の売買により大きく変動しており、一見すると資金繰りに常に難儀しているように見えるかも知れませんが、後述の通り、実は違います。

営業CFから投資CFを差し引いた、正味の現金の蓄積を2000年12月期を基準にまとめたグラフを下図に示します。

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キャッシュフローを表にまとめただけでは見えてこなかった傾向がはっきり見て取れます。4年に一度に、大きく上下動することがありますが、着実に現金を稼いでいることが分かります。営業CFのばらつきから考えるとあり得ないくらい美しいグラフですね。ザインは現金を有価証券という形で多めに持ちつつ、不安定な営業CFを補償しているものと思われます。

半導体ビジネスはキラーアプリケーションの登場した時に大きく需要が増加し、各ベンダーが生産を増やし、数年後、ブームが落ち着いた頃に供給過剰になる、というサイクルを何度も繰り返しています。いわゆるシリコンサイクルです。ザインはこのような激しい波を意識し、稼いだ現金を不良資産化のリスクのある資産にせず、換金性の高い有価証券でやり繰りしているのでしょうね。このような高等な経営ができる会社が存在するとは、正直びっくりしました。

大正製薬のキャッシュフロー分析

今回のキャッシュフロー分析は大正製薬です。鷲のワークでお馴染みで、代表的な商品は、リポビタンDパブロンコーラック等、大衆向けの薬品が主力となっております。テレビコマーシャルをうまく使って、消費者の心をうまく掴んでる企業だなという印象があります。

2000年3月期以降のキャッシュフロー計算書をまとめたのが下表になります。

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営業CFの累積は7080億円に対し、投資CFは2927億円で、正味の現金の稼ぎは、4153億円となっております。2015年の売り上げ高が3000億円弱なので、そこそこ効率の良い商売をしていると考えられます。

次に営業CFから投資CFを引いて残った正味の稼ぎを2000年を基準に累積したグラフを下図に示します。

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2004年に大きく増加している点と、2012年に減少している点に不連続な印象を受けますが、大勢には影響はなく、順調な事業であることが伺えます。

SANKYOのキャッシュフロー分析

今回のキャッシュフロー分析はSANKYOです。パチンコ台のメーカーとして有名な企業です。

パチンコはどこからどう見てもギャンブルです。実は日本という国は、競馬場とか競輪場とかの公営企業にしかギャンブルは許可しておらず、公然と民間企業が営業している点、パチンコ店は明らかに違法行為であります。口実としてはパチンコとは遊戯であり、パチンコ玉と現金の交換はパチンコ店外でやっていることなので、ギャンブルではないってことになっていますが、おかしいですよね。

似たようなものに風俗店があります。ここもやっている内容は売春であり違法なのですが、客と従業員が私的に恋愛関係に落ちているという口実により存続できています。風俗店とパチンコ店が違うのは、風俗店はたまに強制捜査が入り、閉店させられるということです。強制捜査は行政や警察の匙加減で決まっています。強制捜査はパチンコ店にも行われ得るものなんですが、パチンコ店が取り締まられたという話は聞いたことがありません。警察OBがパチンコ関連企業に天下りしている為と言われています。風俗にしろパチンコにしろ、ルールが権力者次第となっている部分があり、必要悪とは言え何だかなと思います。

このようにパチンコとは一般的な感覚からすると、あまり関わりたくないなと思う市場なのですが、SANKYOはそういう危うい顧客にパチンコ台を売って生計をたてております。キャッシュフロー計算書の2008年3月期以降をまとめたものを下表に示します。

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8年間で営業CFが2448億円のプラスなのに対し、投資CFはマイナス502億円であり、営業CFから投資CFを引くと、プラス1946億円です。SANKYOの年間売り上げ規模が2000億円程度ですから、相当高い利益率で現金を生み出していることが分かります。

次に営業CFから投資CFを差し引いた正味の現金の稼ぎを、2008年を基準に累積したグラフを数に示します。

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これを見ると、2013年3月期だけ僅かに減少していますが、他は概ね好調な様子が見て取れます。2013年の営業CFの減少した理由は売り上げが激減したことによるものです。競合の「平和」の決算を見てみるとSANKYOが減った分、大幅に売り上げを激増しており、顧客が一斉にライバル企業に動いた結果のように見えます。

パチンコ業界のことはよく分かりませんが、たった一年で売り上げがライバル間で大幅に移動するというのは面白いですね。パチンコって、少数の機種が市場を支配しているのでしょうかね。新機種の乗り換え時に人気機種に顧客が集中するため、魅力的な機種を開発したメーカーが大きく売り上げを伸ばす構造になってるのかも知れません。

このようにパチンコ業界は競争が激化しており、新機種開発の成否の影響が甚大と推測できます。しかし、利益率は非常に高く、そつなく開発できれば投資効率は高いです。また、仮に失敗しても2013年、SANKYOは営業利益で黒字は確保しており、そこまでダメージは大きくないと言えます。


ただし、パチンコについては、要注意点として、現在、下記のリンクのような「くぎ曲げ規制」問題が燻っています。ギャンブル性を高めるためにパチンコメーカーはくぎ曲げを行っていたのですが、これが風営法に抵触するということで、メーカーがパチンコ台を自主回収するそうです。そもそもギャンブルの為の機械なのに、ギャンブル性があるから問題って意味が分かりませんよね。この辺り、警察はパチンコをギャンブルとは認識しておらず、違法行為を意図的に見逃してきたことが影響しているのだと思われます。「くぎ曲げ」云々は表向きの理由で、裏ではパチンコと警察との間の癒着関係に変化があったのかも知れません。

パチンコ台に「クギ曲げ」不正が横行 警察庁が悪質行為だとして、店舗に撤去を求める (J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース

この騒動がパチンコメーカーの収益を一時的に圧迫することは間違いありません。業績への影響がまだ見えていないので、投資する場合は非常に大きなリスクになります。また、パチンコと警察との関係の変化であるとすれば、パチンコ業界そのものも変化していくので、今後の展開にも注意を要します。個人的にパチンコ業界にはやっぱり触らない方が無難かと思います。

オリンパスのキャッシュフロー分析

今回はオリンパスキャッシュフローを分析します。オリンパスは2011年の8月に粉飾決算が明るみに出て、大きな話題を呼びました。

オリンパス事件 - Wikipedia

内容を見てみると、バブルのころの有価証券投資での損失を20年にもわたって隠ぺい。2008年にダミーのM&Aをでっちあげ、実体よりも多い金額で買収を実施。実体よりも多い部分を翌年の減損として計上し、バブル期の損失を無かったことにしたということです。何だか凄いトリックですね。

今は損失が解消されているんだから、普通のサラリーマンなら自分の首を絞めるだけだし敢えて突っ込みはしないもの。当時内部告発した方々はもの凄い倫理観を持っていたのだなと思います。株主としては、この問題が放置されればいずれまた同じようなスキームが使われることは明らかなので、この内部告発は将来のオリンパスにとってすごく良いことだったかなと思います。

下表が2009年3月期から最新版までのキャッシュフロー計算書のまとめです。(2008年以前のデータは決算短信が存在しませんでした)

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2009年3月期以降で稼いだ営業CFが3388億円に対し、使った投資CFは800億円。結果として2588億円もの現金を生み出しています。オリンパスの2015年3月期の売上高は8000億弱ですから、かなり優秀な部類です。

次に、営業CFから投資CFを引いた現金の増加傾向を下図のグラフに示します。

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現金は、ほぼ単調に増加しており、業績が継続的に好調であることが見て取れます。オリンパス内視鏡に代表されるヘルスケア分野の首位に立っており、ここが業績を牽引しています。ヘルスケアは今後伸長する市場と言われており、さらなる業績の拡大が見込まれます。

粉飾という大問題はありましたが、オリンパスの場合、本業とは関係のないところでの問題だったので、業績にはほとんど影響は無かったようですね。ただし、現在株価は相当高値圏にあるので、株への投資は注意が必要です。

コマツのキャッシュフロー分析

今回のキャッシュフロー分析はコマツです。建設機械メーカーの有力企業であり、VOCからヒントを得て、ITを建機に取り込んだことで大きく業績を伸ばしたことで有名です。近年は中国経済の失速を受け、株価は下落傾向にあります。

 

まずは、キャッシュフロー計算書をまとめたものを下表に示します。この企業もHP上に過年度の決算短信をあまり保存しておらず、2010年3月期以降のものしかありませんでした。

 

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営業CFから投資CFを引いた正味の稼ぎは、2012年3月期にマイナスがありますが、これは東日本大震災の影響、民主党政権下の円高によるものと見られ、ここは見逃してもよいかと思います。その他の年は現金を確実に稼げており問題ないと思います。

 

この企業のキャッシュフローで特殊なのは、正味の稼ぎとほぼ同額の財務CFを、毎年計上している点ですね。営業CF以上の投資CFを出さないまでは多くの企業が心がけていることですが、財務CFは年によってばらつくことが多いです。理由は、株主への配当を一定に保つ必要があったり、株価によって自己株の償却を判断する必要があったり、長期借入金の返済期限によるためです。コマツキャッシュフロー計算書を見ると、赤字の2012年3月期を含め、6年間も同じ傾向なので狙ったものなのでしょう。キャッシュフロー計算書の内訳をみると借入金の入れ替えや、自己株の償却や、配当の支払いなど、ちょっと複雑な調整になっています。財務CFを含めキャッシュフローを意識しているという点は他企業よりも意識が高いと言えそうです。

 

次に営業CFから投資CFを引いた正味の稼ぎを2010年3月期から累積したグラフを下図に示します。

 

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6年間で5000億円の現金を生み出しており、コマツの年間の売り上げが2兆円、営業利益が2000億円、純利益が1500億円程度ということから、妥当な線かと考えられます。データが6年分しかないので、あまり自信は持てないのが懸念点ですね。こういう企業は多いのですが、過年度の決算はその企業の経営姿勢をよく反映しており非常に参考になります。ぜひ公開してほしいものです。

キヤノンのキャッシュフロー分析

今回のキャッシュフロー分析はキヤノンです。この企業の経営者である御手洗富士夫氏は他企業に先駆けて「キャッシュフロー経営」を言い出したことで有名です。もともと財務部門か何かの出身であり、大企業では少ない数字の分かる経営者です。また、キヤノン創業者の甥にあたります。社長就任時に大胆な改革を行ったことで有名ですが、創業者の血筋であるからこそ経営改革を断行できたのでしょう。このパターンは今のトヨタ自動車の社長である豊田章夫氏と符合するかも知れません。

 

ではまず、キヤノンのHPに存在する限りの決算短信を使って作成したキャッシュフロー計算書を下表に示します。

 

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年によって、営業CFは数千億規模でばらついていますが、その分、その年の投資CFをコントロールしており、結果、営業CFから投資CFを差っ引いた正味の稼ぎは、毎年、高水準なプラスになっています。素晴らしい経営です。

 

次に営業CFから投資CFを引いた正味の稼ぎを1999年12月期から累積したグラフを下図に示します。

 

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これも美しい単調増加です。優良企業でもリーマンショック東日本大震災の年は、現金保有高を減らす傾向にあるのですが、キヤノンは現金を生み出し続けています。15年間の累積も3.5兆円となっております。キヤノンの現在の売り上げ規模が4兆円程度であることから考えても妥当な水準です。素晴らしいですね。

 

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日立製作所のキャッシュフロー分析

第六回のキャッシュフロー分析は日立です。東芝が経営危機を迎える中、対比として日立が持ち出されていますが、そんなに良い企業なのか?と思っていたので、分析することにしました。まずはキャッシュフロー計算書のまとめたものを下表に示します。
 

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ほとんどの年度で営業CFから投資CFを差っ引いた、正味の稼ぎはプラスを示しています。また、財務CFについてもほとんどがマイナスです。財務CFがマイナスの場合は、借入金の増加よりも、借入金の返済、または株主への配当が、大きかったことを示しており、健全な傾向です。次に2002年3月期を基準に正味の稼ぎを蓄積したグラフを下図に示します。

 

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2002年の時から比べて、2兆円くらいの稼ぎがたまっており、そこそこ順調であることが分かります。ただ、優良企業と比べ、単調に増加しているとはとても言い難く、何度か踊り場のような年があります。2006年から2010年までの期間はほとんど現金が増えてませんし、2013年以降も現金を生み出せてません。巨額の投資を長期に渡ってやり続けている傾向にあり、現金の回収がいまいち追いついていないように思えます。投資家の観点としては、そこまで優良な企業かな…?と思います。

 

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