富士フイルム キャッシュフロー分析

今回は富士フイルムホールディングスの分析です。

 

この会社の最近のニュースは、米子会社富士ゼロックスでの粉飾決算が挙げられます。500億円規模だったかと思います。粉飾と聞くと、粉飾発覚から、奈落の底まで落ちていった東芝という会社を思い浮かべますが、東芝は粉飾発覚以前からキャッシュフローは火の車で、数字をよく見せるために粉飾をするしかなかったというのが実情です。それに対して富士フイルムはどうなのかが注目ですね。はたして、東芝のように最初は千億に満たなかったのが、あれよあれよという間に一兆円規模の損失まで、まるでサイヤ人の戦闘力のように膨れ上がっていくのかどうか。

 

 

東芝といえば、東芝は粉飾発覚直後、財務改善のために将来有望と言われていた東芝メディカルを売却するのですが、買収に手を挙げたのがキヤノン富士フイルムでした。最終的にキヤノンが勝ったのですが、金額で競り勝ったというものではありませんでした。


2015年当初、東芝は一刻も早く金が欲しかった。理由は2015年3月末時点で、米原発で数千億規模の巨額の減損をしなければならず、このままでは債務超過になってしまうから。しかし、同業他社への売却は規制当局の審査に時間がかかるため、三月末には到底入札を終えられないことも分かっていました。

そこでキヤノンは第三の会社を立ち上げ、そこに東芝メディカルを買わせるという手法をとることになりました。第三の会社とはいえ、キヤノンとくっついたところですから、規制当局的には真っ黒なんですが、何故か東芝はこれを承認。実際売却後も大きな問題が起きていません。
おそらく東芝キヤノンが裏で手を引いていたのでしょう。もともと東芝キヤノンは技術提携でも経営者同士のつながりという意味でもかなり密接につながっており、それゆえの連携プレーだったんではないかと思います。


しかし、この動きに待ったをかけたのが富士フイルムでした。納得いかない、と。おそらく、自分たちは金額で勝っていたんでしょうね。待ったをかけたところでどうしようもなかったんですが、とにかく噛みついていました。この辺の経緯が以下の記事です。
http://www.sankei.com/premium/news/160720/prm1607200001-n1.html
私はこの流れを覚えていたので、私は富士フイルム粉飾決算東芝キヤノン連合のやり返しだと思うんですよね。自分たちのやることに異を唱えるものは許さない、という。東芝の背後にある原発村の人たちの思考からしてもやり兼ねないと思います。
しかし、それにしても東芝東芝メディカル売却時には真っ黒いスキームまで使って避けたかった債務超過に翌年になって陥るとは。残念過ぎます。

さて、富士フイルムの話に戻ると、ここ10年間のキャッシュフローの状況が以下です。

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非常に優秀。純利益以上の現金を創出することに成功しています。粉飾でキャッシュフローはほとんど訂正されないということを考えると、イメージが悪化した今が買いなのではと思っています。
これはスズキのパターンを想起させますね。あの会社も燃費不正(高燃費を低燃費と言うという珍しいパターン)で著しく株が下がったのですが、今はどの自動車会社よりも高い株価をつけてますからね。近い例でいえば、オリンパスとかもそうか。あそこも粉飾で大きく株を下げたにも拘わらず、現在の業績は絶好調。さて、仕込んでおきますか。

自動車メーカー6社のキャッシュフロー分析

随分日が開いてしまいましたが、キャッシュフロー分析を再開します。

昨今、自動車メーカーの業績が低迷しているようで。要因は北米市場と言われているんですが、正直よく分からないです。販売奨励金が収益を圧迫しているということでしょうか。

とにもかくにも何十年も好業績を維持してきた自動車産業。今が株の買いではないかと考え、今一度、業績をレビューしてみました。

といっても以前トヨタは分析しており、散々な結果でした。その時と比べて今はどうなのか?というところも考える意味で、トヨタ・ホンダ・スズキ・日産・スバル・マツダの5社を分析し直しました。

※ちなみに以下のリンクがトヨタを分析したときの記事。

kent-s.hatenablog.com

まずはホンダ。そもそも買おうと思っていたのがホンダ株でした。最近の業績低迷に加え、タカタの実質的な破綻の所為かずいぶん売られており、かなりの安値圏に入っていて、「おっ」と思ったのです。で、こちらがキャッシュフロー(CF)のここ10年のまとめです。

 

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ボロボロっす・・・。ネットCFに赤字が多い。10年トータルするとようやく2000億程度になりますが、純利益の合算が4兆超えていることを考えると、ほとんどが自社の投資で金が消えている計算です。こいつはヒドイ。

こういう状況なのは何でかというと、投資していかないと競争力を維持できないから、つまり過当競争ですね。投資したものが固定資産になっているため、純利益は黒字になっているんですが、金は全く稼げてない。ここが会計の非常に分かりにくいところ。

その固定資産が本当に帳簿上に記されているだけの価値があるかなんて、客観的に分かりませんよね。特に製造設備で高価なものは、それ以外に用途のないものばかり。技術革新でゴミになったりなんてこともザラにあります。今のその会社にとっての価値は、ほとんど意味はないと私は思います。

だから、お金を稼げてるか、キャッシュフローの見極めが投資では重要と思うのです。

次にトヨタ。ここもネットCFが万年赤字だったことは以前の記事に書いた通り。あれからどうなったかというと…。

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2016, 2017年は黒字になってるみたいです。しかし、純利益の半分以上が投資に回っている現状は変わっていません。大丈夫なんかこれ。

次、日産。

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ここが最悪。5年間で1.4兆円の持ち出しが起きています。にも拘わらず純利益は9.1兆円の黒字。かなり厳しい。

さて次はスズキです。

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ここは軽に注力したこと、インド市場に照準を絞ったこと、など他社とは違う試みが功を奏してます。実はスズキの株は昨今の情勢でも、上がり調子なんですが、こういったところに原因があるのかもしれませんね。しかし、高いが故に買えないんです。

次に、スバル。

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ここは自動車業界の中にあって驚くほど収益率が高い。ブランド力があるから、と言われていますね。財務的にはぴかいち。株価もすごく高いので手は出せませんが、スズキと同じく、手ごろな価格になったら狙いたい株です。


最後に、マツダ

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ここも立ち位置がかなり特殊。純利益では数年前まで頻繁に赤字になっていたのですが、昨今は持ち直してきています。ネットCFとしても黒字。過当競争に巻き込まれない位置づけに成功したように思えます。
ただ、この業績をずっと続けていけるのかがこの企業のリスク。過去五年以内に赤字があるとどうしても注目してしまう。しかし、だからこそ株価が安いというのもあります。

今回見た6社の中で、唯一投資できそうだなと感じたのがマツダだけでした。

サンマルクのキャッシュフロー分析

年明けから日経平均は大暴落。しかし、株は周りが血の海になり、阿鼻叫喚が聞こえる時こそ買い時です。

という訳で前々から気になっていたサンマルク有価証券報告書を読み、キャッシュフローを分析しました。サンマルクは言わずと知れたコーヒーチェーン店。営業利益率が非常に高い上、高成長を何年にも渡って続けています。2006年から現在までのキャッシュフロー計算書のまとめを以下に示します。

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どの年度も営業キャッシュフロー以上に投資キャッシュを使っていないことが分かります。良い感じです。10年トータルで見ると179億円のプラスです。2015年の売り上げが600億円ということから考えると、かなり効率よい経営であると思います。

次に営業CF+投資CFの累積を示します。

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こちらもやっぱりいい感じ。美しい単調増加傾向が見られます。

日産自動車のキャッシュフロー分析

今回のキャッシュフロー分析は日産自動車です。カルロスゴーンが社長をやっていることで有名な会社です。

私が小学生くらいの頃にゴーンが乗り込んで、当時の日本人からしたら黒船のごとく悪く言われましたが、さすが世界的な経営者と言うべきかすぐに業績を立て直しました。一時はゴーン改革の所為で、短期的な収益は伸びたが、技術力が落ちた為、長期的な収益は落ちたと噂されましたが、まだ現実化していないかなと思います。自動車のことはよく分からないですが、矢沢永吉のCMを見る限り、自動運転の技術力は一番この会社が目立ってます。

また、去年は親会社のフランスのルノーとの統合も噂されましたね。元々はルノーに助けられた日産ですが、今やルノーは経営難に陥り、収益面は日産の方がよっぽど優良とのことです。このあたりもゴーンは凄いと思うのです。やっぱり、バブル崩壊後の散々な状態の日本企業を救おうなんて、弱者救済の精神だけじゃ出来ないんですよ。いずれ、ルノーがやばくなった時に日産が役に立つとあの状況下で考えていたのでしょう。恐ろしいです。

さて下表が日産自動車キャッシュフロー計算書のまとめです。

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累積の営業CFは10.8兆円に対し、投資CFは-10.3兆円で、トータル0.5兆円の黒字です。なんとか黒字になっているとは言え、かなり効率は悪いですね。単年で見ると2003年を境に営業CFと投資CFが激増しています。有価証券報告書によると、ルノー支援前の有利子負債を返し切ったから、攻めの経営に転じたとされています。

下図が営業CF+投資CFの累積グラフです。

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2008年から急速にキャッシュが増加していますが、2012年をピークに減り始めています。投資以上の現金を稼げていないように読めます。

トヨタは15年間、キャッシュが出ていく一方でしたので、よっぽどマシなのですが、日産も現金が消えていく事業性格のようです。やはり自動車産業とはこういうものなのか? 今度はスズキも見てみようと思います。

ルネサスエレクトロニクスのキャッシュフロー分析

今回のキャッシュフロー分析はルネサスエレクトロニクスです。この会社は最初、日立と富士通半導体部門がくっついてルネサステクノロジーができ、その後、NECエレクトロニクスがくっついてルネサスエレクトロニクスとなりました。社名には総合家電の名前は無くなりましたが、社内には未だ派閥の名残が濃いようですね。

誕生してから今までリストラを繰り返しています。昨今は業績が回復し、逆に中途採用をしているようですが、果たして実体はどうなのでしょうかね。黒字化した後、社長が二度も変わっているあたり、社内抗争の噂もありますが真相はどうなのか。

では、キャッシュフロー計算書のまとめです。合併前の母体はNECエレクトロニクスなので、2009年まではNECエレクトロニクスキャッシュフロー計算書から拾っています。

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 2014年と2015年に大きな黒字ができており、V字回復がキャッシュフロー計算書上も見て取れます。しかし、2006年からの累積は営業CFが4071億円、投資CFが-5020億円で、差し引きすると949億円の赤字です。業績が回復したとは言え、まだ借金を返しきれてない状態です。

次に営業CF+投資CFの累積グラフを下図に示します。

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2013年までは散々ですね。累積で2500億円まで赤字が膨らんでいました。しかし2014年以降の返済ペースは早く、順調に行けば来年にはゼロに出来そうな気がします。回復のきっかけとなった円安はまだ終了していないので、可能性は高いと思います。私も注目したいと思います。

なお、ここまで赤字を作ってきた会社なので、株への投資についてはあと10年は同じ業績を維持できないと判断できないと思います。特に半導体はサイクルが激しいので、悪い時にどれだけ業績を維持できるかが重要です。

京セラのキャッシュフロー分析

今回は京セラのキャッシュフローを分析します。この会社は伝説の経営者、稲盛和夫が創業した初めての会社です。稲盛和夫と言えば、京セラの他、KDDIを成功させ、JALの再建も成功させた凄腕です。経営スタイルは、徹底して雇用を守り、アメーバ経営というすごく小さな事業単位でも採算性を取る、というもの。

この人の会社に入れた人は、しんどい思いをするとは思いますが、報われるだろうなって思います。同じサラリーマンとして、京セラやKDDIの社員は羨ましいです。もし学生時代にこの人の書いた本を読めていたらなぁって思います。

JALについては「あれだけ公的資金を突っ込めば再建できるのは当たり前」という批判もありますが、2年で再建し、その後の経営成績を見ても、やっぱり凄いと言わざるを得ません。同じように政府の支援を受けたルネサスは何年もかかってようやく黒字化したところです。追加融資もあったはずです。さらに今も収益は安定しているとはとても言えない状況です。シャープは言わずもがな。こうした事例を対比して見ると、JALのV字回復は凄いのです。

今回は京セラの分析でした。まず、2000年3月期からのキャッシュフロー計算書のまとめたものを下表に示します。

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突発的な上下動はありますが、営業CFは安定的です。ほぼすべての年で営業CFから投資CFの合算はプラスです。16年間の累積は、営業CFが2兆301億円に対し投資CFが1兆3546億円で、差し引きで6755億円のプラスです。京セラの昨今の売り上げが1.2兆円から1.5兆円ということを考えると、抜群という訳では無いですが、マズマズの効率性です。

単年で見ると、注目は2009年の1041億円の赤字ですね。リーマンショックにより営業CFが押し下げられた時に、投資CFが激増してしています。内容を見ると、投資CFの内訳は定期預金の預け入れが引き出しよりも多く、有価証券の購入が売却よりも多い為のようです。定期預金は単に満期になる時期の問題で、有価証券は株式市場が安値の時に売却出来なかった為と思われます。つまり、ダメな企業のように、資金繰りが覚束ない状態で無謀な投資をしているという訳では無いようです。

次に営業CFと投資CFの合計の累積グラフを下図に示します。

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2005年から2007年にかけて、停滞していますが、これも定期預金や有価証券の調整によるものが大半であり営業CFが痛んだ訳では無く、設備などの資産の負担が増えたという訳でも無いようです。その他はリーマン期を除き、順調に現金を積み上げており、事業としては問題は少ないと考えられます。

トヨタ自動車のキャッシュフロー分析

今回のキャッシュフロー分析はトヨタ自動車です。日本の時価総額ナンバーワン企業であり、自動車販売台数は世界のトップを走っています。

企業規模だけでなく、営業利益率でも優良です。日本の製造業は1%〜5%の低い利益率に悩まされることが多いのですが、トヨタは継続的に10%を超えてきています。これらのことからトヨタへの投資は安パイだろう…と思われがちです。しかし、キャッシュフローは必ずしも健全とは言えないようです。

下表が2001年3月期から現在までのキャッシュフロー計算書をまとめたものです。

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累積のCFは、営業CFが33.8兆円に対し、投資CFが-38.5兆円となっており、トータルで4.7兆円の赤字です。年ごとに見ても、キャッシュフローは、ほとんどの年で赤字になっています。この期間、トヨタはほとんどの年度で営業黒字であり、営業利益ベースでは黒字です。にも関わらず、何故赤字になっているのかと言えば、稼いだ分が現金以外の資産に化けている為です。

次に営業CFから投資CFを引いた正味の稼ぎを2001年から累積したものを下図に示します。

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ほぼ単調減少ですね。トヨタという会社は事業をやればやるほど現金が消えています。不足した現金は借り入れ金で賄っており、その為にトヨタではほぼ毎年財務CFは黒字になっています。

さて、これは健全な事業運営と言えるのでしょうか? 毎年、営業CFで稼いだ金を何に投資しているのかを分析する必要があるでしょう。自動車メーカーは自動車ローンという名の債権を顧客に対し発行して売り上げとすることが多く、これは投資CFに計上されるので、その所為でCFが赤字になる可能性はあります。しかし、車の消費者向けのローンは安全だと言い切れるのかは、またさらなる分析と判断が必要となります。

私はキャッシュフロー経営の大前提の観点から、稼いだ金が現金以外の形になっているのは怖いかなと感じます。特に自動車ビジネスのことをよく知りもしない立場から見ると、とても投資できないです。ただ、興味はあるので、今後、競合のキャッシュフローは調査してみようかなと思います。